散文詩

  • 期待色の夏祭り

    期待色の夏祭り

    夏祭りの日の空には、ときどき「期待」が浮かびます。 天気予報では晴れと言っていたのに、朝起きると窓の外には薄い雲がふわふわ流れていて、空全体が何かを隠しているようでした。私は少しだけ残念になりかけたのですが、そのときベラ […]

  • 波打ち際の続き話

    波打ち際の続き話

    友達が、 「最近、夜中にひとりで海辺を歩いてるんだよね」 と言いました。 私は最初、 「危ないからやめたほうがいいんじゃない?」 と言いました。 すると友達は、 「だから今日は二人だよ」 と、なぜか解決した顔をしました。 […]

  • 忘れもの案内所

    忘れもの案内所

    秋の商店街には、ときどき「忘れもの案内所」が現れます。 もちろん地図には載っていませんし、市役所も把握していません。でも、季節が少しだけ人を感傷的にする頃になると、ふらりと現れるので、たぶん存在します。 その日も私は夕方 […]

  • 海の見える二駅ぶん先の山

    海の見える二駅ぶん先の山

    その山は、山というより「日常から半歩だけ浮かぶ場所」でした。 駅を降りて、商店街を抜けて、住宅街を曲がって、ゆるやかな坂を登ると着くような山です。標高なんて覚えていません。たぶん山自身も気にしていなかったと思います。 あ […]

  • 出口のある永遠

    出口のある永遠

    子供のころ、夜の車は小さな宇宙船でした。 後部座席に座って、窓に額をつけながら流れていく街の明かりを見ていると、自分だけが少し遠い世界へ運ばれている気がしました。助手席では母が何か話していて、運転席では父がハンドルを握っ […]

  • 雨やみ待合所

    雨やみ待合所

    夕方の雨は、ときどき予定になかった気持ちまで連れてきます。 駅から家まであと十分というところで、空が急に思い出したように泣き始めました。最初はぽつぽつだった雨粒が、あっという間に本気を出して、道路も電柱も信号機も、みんな […]

  • 小さな拍手とラーメン一杯

    小さな拍手とラーメン一杯

    深夜の道を歩いていたら、街のはしっこに赤い光がひとつだけ浮かんでいました。 信号でもなく、月でもなく、誰かの忘れ物みたいにぽつんと光るラーメン屋です。 たぶん昼間なら見逃していたと思います。 でも深夜というのは不思議なも […]

  • だいじょうぶ係の桜花びら

    だいじょうぶ係の桜花びら

    春の駅前は、たまに現実より少しだけ浮かれています。改札を抜けた瞬間、風がふわっと桜の花びらを巻き上げて、まるで街全体が「今日はなんかいい感じでいきましょう会」に参加しているみたいでした。地面に落ちた花びらたちは、誰にも頼 […]

  • まだ途中、でも営業中

    まだ途中、でも営業中

    深夜三時の公園には、「もう少しだけ頑張りたい人用の空気」があります。 街灯は半分眠っていて、ブランコは風に揺れながら「今日は静かめ営業です」と小さく軋んでいました。昼間はあんなに騒がしい公園なのに、夜になると急に“考えご […]

  • 良い子の天気予報

    良い子の天気予報

    子供のころ、「正解」はいつも少し遠くにありました。 ちゃんと笑えばいいのか、 静かにしていればいいのか、 手伝えばいいのか、 消えていたほうがいいのか。 毎日それを考えていました。 天気予報みたいに。 今日は近づいて大丈 […]

  • 作戦会議は午前二時から

    作戦会議は午前二時から

    子供のころ、部屋には「夜をやり過ごす係」がいました。 ベッドの端に座っている、耳の少し曲がったクマのぬいぐるみです。名前はたしか三回くらい変わりました。でも、どの名前の時も、そのクマは、ちゃんとこちらの味方でした。 家の […]

  • 雨宿り標準コース

    雨宿り標準コース

    雨の日のコインランドリーは、「今日を少しだけやり直せる場所」です。 商店街の端っこ、薄い青色の看板の下で、洗濯機たちは今日もぐるぐる世界を回していました。外はしっかり雨です。空が大きな洗濯機になって、街ごとすすいでいるみ […]